パキポディウム・サンデルシー(和名:白馬城)は、マダガスカルではなくアフリカ大陸南部を原産とする塊根植物(コーデックス)です。基部が肥大した太い幹に長い棘をまとい、晩夏には外側がピンクを帯びた白花を咲かせます。種子からの実生がしやすく、パキポ入門種としても人気の一種。この記事では、学名の由来から天馬空など近縁種との違い、夏型の育て方・越冬、購入の相場までをまとめます。
白馬城(サンデルシー)の基本情報

幹の形については、最も信頼できる一次情報である南アフリカ生物多様性機構(SANBI)が「大きな塊茎状の幹(tuberous stem)」「直径は最大1mに達し、多くが地上に出る」と記載しています。流通の場では「扁平な塊根」と紹介されることもありますが、それを裏づける一次出典は確認できませんでした。本記事では基部が肥大した塊茎状の太い幹として扱います。
名前の由来・発見の歴史
出典: POWO(Plants of the World Online, Kew) / SANBI(南アフリカ生物多様性機構) / NHK「趣味の園芸」
種小名 saundersii は、ナタール州(現在の南アフリカ・クワズール=ナタール州)の官吏であり、趣味で植物採集を行ったサー・チャールズ・ジェームズ・レナルト・サンダース(Sir Charles James Renault Saunders, 1857–1931)への献名です。彼が採集に関わった標本をもとに、1892年、英国キュー王立植物園の N.E.ブラウン(N.E.Brown)によって記載されました(Kew の機関誌に掲載)。POWO(Plants of the World Online)でも、この学名が現在の受理名(accepted name)とされています。
分類の歴史には少しねじれがあります。1973年に G.D.ロウリー(G.D.Rowley)が、本種をナミビア等に分布する Pachypodium lealii の亜種 subsp. saundersii として扱った時期がありました。しかし現行の POWO では、この亜種名はシノニム(異名)扱いとなり、サンデルシーは独立種として受理されています。「かつて lealii の亜種だった」という経緯は、近縁種との見分けを考えるうえで覚えておきたいポイントです。
和名「白馬城」は、白っぽい幹の色に由来すると複数の日本語専門店やNHK「趣味の園芸」が説明しています。英名 Kudu lily(現地語で koedoelelie)は、アフリカのアンテロープ「クドゥ」にちなんだ呼び名で、本種がアフリカ大陸の植物であることを物語っています。
マダガスカル産パキポとの違い・白馬城の見どころ
パキポディウム属はマダガスカル産の種が大多数ですが、サンデルシーは数少ないアフリカ大陸南部産のグループに属します。同じアフリカ大陸枠には、天馬空(P. succulentum)やナミビア産の P. lealii、P. bispinosum などがいます。グラキリスやラメリーといったマダガスカル産との違いを軸に整理すると、白馬城の立ち位置が見えてきます。
ここで強調したいのが、実生(種子からの育成)のしやすさです。種子専門店SEEDSTOCKは発芽難易度を比較的やさしい部類として扱い、最適発芽温度は25〜35℃、ある販売ページでは「播種から約6日で約9割が発芽した」事例が報告されています。SANBIも発芽適温を27〜35℃としており、温度さえ確保すれば発芽の壁が低い種だとわかります。長い棘をまとった独特の姿を、種から自分の手で立ち上げられる——これが白馬城の最大の魅力です。詳しくはコーデックスの実生・種まきガイドも参考にしてください。
なお「大陸産はマダガスカル産より耐寒性がある傾向」というのは日本語専門店でよく語られる通説で、定量的な一次出典は限定的です。過信せず、あくまで目安として捉えてください。
コレクターが語る魅力とポイント
コレクター視点でサンデルシーが面白いのは、「マダガスカル一強のパキポ属の中で、アフリカ大陸の風土を背負った種」だという点に尽きます。レボンボ山地(Lebombo Mountains)の岩場や乾いた低地林(lowveld)の岩の割れ目で、フルサンを浴びて育つ——その自生環境を知ると、ベランダで太陽を求める姿にも納得がいきます。
小苗のうちは棘が密に生え、成長とともに棘が減っていくという変化も観察の楽しみです。幹の肥大の仕方や枝ぶりには個体差が大きく、同じ実生ロットでも顔つきが変わります。
棚に並べるなら、ぜひ同じアフリカ大陸産の天馬空(パキポディウム・スクレンツム)と並べてみてください。塊茎状の太幹+長い棘の白馬城と、紡錘形の塊根+細枝の天馬空という、対照的な「大陸産の二つの解」を一望できます。属全体の系譜を俯瞰したい方はパキポディウム属の全種まとめもどうぞ。
育て方
基本は夏型として管理します。生育期はおおむね春〜秋(4〜10月頃)、冬は落葉して休眠に入ります。
置き場所
生育期は日当たりと風通しのよい場所で、フルサン(直射)でしっかり日に当てます(NHK趣味の園芸)。自生地のレボンボ山地でも岩場のフルサンに育つ植物なので、日照不足は徒長や軟弱化の原因になります。屋外管理が向きますが、急な強光に慣らす際は葉焼けに注意します。
水やり
生育期は鉢土がしっかり乾いてからたっぷり与えるメリハリが基本です。冬の休眠期は断水〜ごく控えめにし、落葉した株を無理に動かさないこと。水やりのリズムに迷ったら塊根植物の水やりガイドを確認してください。
用土
水はけのよいサボテン・多肉植物用土が適します。赤玉土に軽石やパーライトを混ぜるなど、過湿を避ける配合が定番です(複数出典で一致)。
植え替え
根詰まり・用土の劣化が見えたら、生育期の前半に行うのが安全です。塊茎状の幹を傷つけないよう扱い、植え替え直後は数日水を控えて切り口を乾かします。
温度・越冬
冬は最低3℃以上を目安に管理するのが無難です(NHK趣味の園芸)。ただし海外の栽培情報では「約−3℃まで耐えるが新芽が傷む」「Zone 10–11」とする記載もあり、日本語ソースの「丈夫」と海外の「霜に弱い」が混在しています。数値には幅があるため、霜は避け、寒冷地では室内の明るい窓辺へ取り込むのが安全です(耐寒温度は要確認)。具体的な冬越し手順はコーデックスの冬越し・越冬ガイドにまとめています。
よくある失敗と対処法
症状:冬に幹がブヨブヨ・黒ずむ
→ 原因:休眠期の水のやりすぎ+低温による根や幹の腐敗。
→ 対処:冬は断水〜ごく控えめを徹底し、3℃を下回らない環境へ移動。腐敗部はそれ以上濡らさず、乾かして経過を見ます。
症状:枝が細く間延びする(徒長)
→ 原因:日照不足。室内の弱い光で生育期を過ごすと起こりがち。
→ 対処:生育期は屋外のフルサンへ。室内なら明るい直射の入る窓辺+植物育成ライトの併用を検討します。
症状:冬に葉が落ちて枯れたように見える
→ 原因:これは多くの場合、正常な休眠です。夏型として冬に落葉します。
→ 対処:あわてて水を与えず、暖かくなって動き出すまで控えめに管理して待ちます。
特徴と見分け方
サンデルシー(白馬城/Pachypodium saundersii)は、マダガスカル産が多いパキポディウム属のなかで珍しく南部アフリカ大陸(南アフリカ・エスワティニ・南部ジンバブエ・モザンビーク)に分布する塊根種です。地上に大きく膨らむ塊根、外側にピンク〜紫がさす白花、光沢のある葉が同定の手がかり。なお学名の種小名 saundersii は、1891年にバーバートン地区で型標本を採集した治安判事・植物採集家 C.J.R. Saunders(1857〜1935)への献名で、花色に由来する名ではありません(和名「白馬城」は白花の印象から付いた流通名と思われますが、由来を裏付ける一次情報は確認できていません)。また分類上は P. lealii の亜種(P. lealii subsp. saundersii)として扱う見解もあり、本記事では独立種 P. saundersii として記載しています。
主な特徴
- ピンク〜紫を帯びた白花:花弁は基本的に白で、外側(裏側)にピンク〜紫の色がさすのが特徴。現地では年に一度多数の花をつけ、原産地では概ね初秋〜初冬(南半球の2〜5月)に咲くとされる。純白でも濃い紫一色でもない『白+外側の差し色』が見分けの軸。
- 地上に大きく露出する塊根:幹基部が大きく肥大した塊根(コーデックス)を持ち、径1mに達することもある大きな塊根が土の上に大きく露出して育つのが目立つ。栽培の見どころもこの塊根で、サイズ・枝分かれには個体差が大きい。
- 対になった長めのトゲ:茎・枝に托葉が変化した鋭いトゲが対(ペア)で並ぶ。トゲの長さはおおむね20〜70mmと幅があり、小枝ほど短くなる傾向。成熟に伴いトゲが減る個体も知られる。
- 光沢のある濃緑の葉と低い樹高:葉は光沢のある濃い緑で、全体は低い灌木状。樹高はおおむね0.5〜1.5mで、近縁の P. lealii のような数mの高木にはならない。
- 夏型・落葉性の生育サイクル:夏に成長し冬に落葉して休眠する夏型の塊根植物。日当たりと水はけのよい用土を好む。具体的な最低耐寒温度は栽培環境で差があり一次情報で要確認。
似た種との見分け方
- サクレンタム(Pachypodium succulentum)は花弁中央に濃い紫の縦筋がはっきり入るのに対し、白馬城は花弁外側にピンク〜紫がさす『白花』で中心の濃色ストライプは目立たない。さらにサクレンタムの塊根は半分以上が地中に埋まる地下塊根型で、地上に大きく露出する白馬城と露出度が異なる。分布もサクレンタムはケープ地方など南アフリカ南部寄り、白馬城はジンバブエ〜クワズール・ナタールの東部寄り。
- ビスピノーサム(Pachypodium bispinosum)の花は紫〜ピンクの釣鐘(ベル)状で径15〜20mm前後と、白基調の白馬城とは色も形も異なる。塊根は高さ0.6mほどで一部が地中に埋まり、トゲも10〜20mmと白馬城(20〜70mm)より短め。見分けは『釣鐘形の紫花か、白+差し色の星形花か』が決め手。
- ラメレイ(Pachypodium lamerei、マダガスカル)は白花だが喉部が黄色く、何より幹が円柱状に直立して数mまで伸びる高木型で、トゲは3本ずつ束生する。地上塊根が主役で低い灌木状にとどまり、トゲが対(2本)で並ぶ白馬城とは樹形・トゲの付き方・原産地(大陸アフリカ vs マダガスカル)で明確に分かれる。
購入・入手ガイド
白馬城は国内実生株・輸入種子ともに広く流通しており、入手しやすい人気種です。「種から育てたい派」には種子(SEEDSTOCK等の種子専門店で、10粒・20粒・50粒・100粒といった単位で販売)、「すぐ姿を楽しみたい派」には実生株(園芸専門店itanse、manas-green、山野草ナーセリー、Amazon/楽天/Yahoo!オークション等)が向きます。
相場の目安は、株なら3.5号ポットで約8,000円前後(itanseの実例)、種子なら10粒で約1,200円から(いずれも調査時点・サイズや実生年数で大きく変動するため要確認)。オークションは個体差が大きいので、幹の肥大具合・棘の状態・根張りを写真でよく確認しましょう。選び方や入手先の比較は塊根植物の購入ガイドも参考になります。
CITESについては、パキポディウム属は原則としてワシントン条約附属書IIに掲載されています(P. ambongense・P. baronii・P. decaryi など一部は附属書I)。国際取引には書類が必要になる場合がありますが、国内で実生・流通している株や種子を国内で購入する分には通常問題ありません。海外からの個人輸入を検討する場合は、最新の規制を必ず自分で確認してください(CITES区分・手続きは要確認)。
Yahoo!オークション落札数・相場データ|パキポディウム・サンデルシー
パキポディウム・サンデルシーはYahoo!オークションでの流通があり、相場の目安が掴みやすい品種です。Aucfree(落札アーカイブ)では直近12ヶ月で144件の落札を確認できます。以下は「パキポディウム サンデルシー」で検索ノイズを除いて集計した参考データです。
高額落札Top3
対象期間で確認できた高額落札例です。価格保証や購入推奨ではなく、過去にどのような株が高値になったかを見るための参考データです。
高額化要因を読む
サイズ・株姿・仕立ての評価で高値になった個体です。状態差が大きいため価格は参考程度に。
高額化要因を読む
サイズ・株姿・仕立ての評価で高値になった個体です。状態差が大きいため価格は参考程度に。
高額化要因を読む
サイズ・株姿・仕立ての評価で高値になった個体です。状態差が大きいため価格は参考程度に。
※ Aucfree検索結果から、出品タイトルを実査して検索ノイズ・別種・まとめ売り・種子を除外した参考データです。複数株・斑入り・鉢付き・由来付きによる価格上昇は補正していません。Yahoo!オークションでの購入を推奨する意図はありません。
